下山事件全研究

昨日、テレビのチャンネルをNHKに合わせると、展示してあったSLを分解修理して再び動くようにするというドキュメンタリーをやっていた。これはラッキーと思ってそのまま観ていた。俺は鉄道オタクでもないし、SLにも興味はない。動いている蒸気機関車の車体の底部が油まみれになっているものかどうかを知りたいだけだ。


下山事件に「秋谷鑑定」と呼ばれるものが出てくる。この中で、下山定則の衣服に付着していた物質の分析、鑑定結果が報告されている。注目すべきことは、衣服に付着している油は米糠油であり、機関車などから飛び散ったものではないとしていることである。(つまりそれが本当なら、鉄道自殺ではなく他殺であることの決定的な証拠)

下山事件研究会の事務局長をしていた佐藤一は彼の著書「下山事件全研究」の中で、秋谷鑑定の矛盾点を調べ上げ、徹底的に批判している。数多くの鉄道関係者、法医学者などから話を聞いて、鉄道の轢死体で衣服に機関車油が付かないことなど考えられない、ほとんど油まみれになるという結果を得ている。
さらに彼は、本州最後のSLが山陰本線から消える直前の時期に、山口県長門機関区を訪れて、機関車の車体の底から油と油泥を採取している。一度目の訪問の後、自分は誰かに騙されているのではないかと疑問を抱き、結局三回訪れて毎回油の採取を行っている。その上、抽出機や濾過装置などを購入して、自宅の風呂場で採取した油の抽出作業までしているのである。

下山事件全研究」を読むと、事件の真相とは別に、佐藤一という人は一体どういう人なのかと考えずにはいられない。「下山油」に関することだけではなく、長い年月をかけて事件全体をあらゆる角度から調査、分析した結果が、「下山事件全研究」である。
1976年に出版されたものは絶版で、現在入手できるのは2009年の新版。著者による新版のまえがきが追加されている。

新版・下山事件全研究

新版・下山事件全研究