勝利宣言/長島フクからの年賀状(7)

11月に勝利宣言予告をした頃から興味を失って、最近は帝銀事件関係の本ばかり読んでいました。
しかし勝利宣言するということで、もう一度「下山事件 最後の証言」を飛ばし読みしてみました。そこで気になったのは、柴田哲孝の母が松本清張「下山国鉄総裁謀殺論」を読み終わった後の描写です。

「ねえ、大変だわ。この本の中に、私の知ってる人が出てくるのよ...」
それが、長島フクだった。
母はその名前だけでなく、末広旅館という屋号もはっきりと記憶していた。
直接会ったことはない。母が覚えていたのは年賀状だった。
「父さんところにこの人から毎年、年賀状が来ていた。女の人の名前なんで、気にはなっていたんだけど。いったいこれ、どういうことなんだろう...」

父親が末広旅館に泊まったことがあり、そのため長島フクから年賀状が来ていたというだけで、何故「大変」になるのでしょうか。
長島フクが偽証をしていると松本清張が書いているのであれば少しは理解できますが、そんなことは書いてありません。五反野周辺に現れたのは替え玉であり、長島フクと他の目撃者は単にそれを証言したということしか書かれていないのです。偶然、自分の知っている名前が出てきて驚いた、で済むことです。柴田哲孝の母親の側から、柴田宏が犯罪に関わっていたような雰囲気を作り出そうとする意味がわかりません。末広旅館に泊まっただけで犯罪者であると疑う必要はないでしょう。
「下山国鉄総裁謀殺論」の中身を再度確認しながら読まない限り、誰も不自然とは思わないで読み進めるでしょうが、ここにも無理があると思います。