第十三回 無形化世界の力学と戦略

無形化世界の力学と戦略―理系からの解析は戦略と地政学をどう変えるか

無形化世界の力学と戦略―理系からの解析は戦略と地政学をどう変えるか

上下二巻本。
今まで読んだ中で、最も風変わりな本と言えるかもしれない。どう紹介すればよいのか、途方に暮れる。要約してしまうとトンデモ系の本だと誤解される可能性が高いが、敢て挑戦してみよう。
第二次世界大戦後の冷戦というものを理解するために、著者は二つの相似的構造を導入する。一つは、冷戦(==準第三次世界大戦)と第一次世界大戦との間の進行経過の相似性。二つ目は、通常世界の戦力と無形化世界の戦力の相似性。無形化世界というのは、核抑止力によって通常の形の軍事力の行使(戦争)というものが生じ難くなったために、経済力、マスメディア等のパワーが軍事力に取って代わって主役となった世界のことを表している。
無形化世界の戦力と、軍事力との間には、以下の対応が付けられる。

  • 陸軍力 <-> 経済力
  • 海軍力 <-> 知的影響力(研究活動)
  • 空軍力 <-> マスメディア

下巻では、冷戦と第一次世界大戦との対比を詳細に行い、無形化世界の戦略、戦術について、さらに、今後我々が選択すべき戦略について解説している。
余程大きな本屋でなければ置いてないと思う。出版元の通商産業研究社に申し込む方法はあるようだ。私は、八重洲ブックセンターの物理学専門書の棚(笑)で偶然見つけて買った。