第九回 日の名残り

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

これが名作であることは頭では理解できる。作者の技量が尋常ではないこともわかる。しかしどうしても馴染めない。主人公である執事の回想によって話が進んでいくが、執事の独り語りというのは、どう考えても私には違和感がある。昨年読んだ「遠い山なみの光」も、やはり回想が中心になっているが、こちらについては全く違和感がなかった。結局、執事の語りを日本語に翻訳してしまうと、読者に対する説明口調という感じが強く出すぎてしまうのではないだろうか?日本語の限界かもしれない。最後に丸谷才一の素晴らしい解説を読んで、かなり救われた思いがした。